山岳収集家鈴木優香さん
自身の活動を総称して“山岳収集家”と名乗る鈴木優香さん。
山に登り、そこで出会った景色を写真に収めるだけでなく、
それらをハンカチに仕立てるなど、表現のかたちは多岐にわたります。
限定香調〈OAK FOREST〉のパッケージに使用された写真を手がけた鈴木さんに、
彼女の原点ともいえる「MOUNTAIN COLLECTOR」のプロジェクトや
OAK FORESTの香りについて話を伺いました。
vol.1山の景色をつくる、
いくつもの断片COLLECT PIECES FROM MOUNTAIN

肩書きである”山岳収集家”という名前の由来について教えてください。
“MOUNTAIN COLLECTOR”と呼ばれる、山に登って撮影した写真をハンカチへと落とし込むプロジェクト。もう9年続けている私の原点となる活動ですが、肩書はこのプロジェクトから名付けたものでした。

日本だけでなく、世界中の山々にも挑戦をしている鈴木さん。世界で2番目に高い「K2」の麓を目指して歩いた時の写真。
ハンカチだったのはどのような理由があるのでしょうか?
学生のころから布が好きで、なにか作るのであれば布を素材としたものを作りたかったんです。紙とは違い布は、折りたたんでも跡が残らず、折り重ねることで新しい表情も生まれる。立体的に形を変えられることに魅力を感じていました。布の四隅を縫い合わせるだけでもひとつのプロダクトとして成立する、そのシンプルさも、私がハンカチを好きな理由のひとつです。山の中で惹かれる風景にも、どこか通じるものがあります。そぎ落とされた先に残る、最後のかたち。そうしたものにこそ、美しさを感じることが多くて。それは、私が大切にしている美学のひとつかもしれません。

ハンカチの薄さについても、こだわりを教えてください。
山の澄み切った空気感や、遠くの景色を眺めた時のまぶしくてぼんやりとした視界。集めた景色たちを思い出すような感覚やその土地での空気感を表現しています。

山の景色を集めていくという行為は写真やプロダクトの表現だけではなく、実際に木の実や枝を拾うことでもあると話す鈴木さん。

自宅のあちこちに置かれているのは、旅先で出会った人形や手作りの雑貨たち。その土地ならではの表情をもつ、個性豊かなひとつひとつに鈴木さんならではのまなざしが宿っています。
vol.2ささやかなものを見つけてFINDING SMALL THINGS

今回の撮影もそうですが、山の写真を撮るときはフィルムカメラを使うと伺いました。
いつも現像してから作品用のセレクトをするまでに、数か月から1年ほどあけることが多いです。撮った直後だと、どれもお気に入りに思えてしまって、冷静に選べなくて。少し時間を置くと、そのとき気づかなかったことに目がいったり、新しい見え方ができるのもおもしろいんです。そういった時間のゆらぎも、フィルムならではの魅力だなと思います。

オークの森を訪れていかがでしたが?
初めてミズナラ(オーク)の木が集まる森を訪れたのですが、黄色からオレンジにかけての色幅の広さに驚きました。一方で、標高が高い山では、濃い赤やオレンジに紅葉する草や低木が目を惹きます。植生によってその森や山の色合いが変わるのは、おもしろいですね。

カメラを向けたくなるのは、足元に見つけた小さな存在や、見過ごされがちなもの。人知れずそこにあるも 自分の目で拾い上げていく。それも、私にとっては”収集”の一つだと思っています。

鈴木さんの視点で映し出される「BAUM オークの森」は、樹皮に巻きつく紅葉した葉や、小さな葉たちが重なり合い新しい表情をみせたりと。シンプルな要素の中に、鈴木さんらしいユニークな視点を感じます。

パッケージに用いた写真は、紅く染まった木々の葉、豊かな土壌をつくる枯れ葉やどんぐりなど森の景色の一片。そのひとつひとつを丁寧に集めた写真が、まるで森を歩いているような気持ちにさせてくれます。
いましか手に入らない、彩り深まるオークの森の香りをぜひ試してみてください。


鈴木優香
山岳収集家
東京藝術大学大学院修了後、アウトドアメーカーの商品デザイナーを経て独立。山で見た景色をハンカチに仕立てるプロジェクト「MOUNTAIN COLLECTOR」では二度とは出会えない美しいものを、拾い集めるように写真に収め、テキスタイルに落とし込む。現在は、世界中の山を旅しながら写真やプロダクトの制作、執筆を通して「山岳収集家」としての活動の幅を広げている。